第172章

邸宅の照明はぐっと落とされ、光は書斎机の片隅だけを照らしていた。竹内結菜の影が、細く、長く引き伸ばされる。

彼女はスマホをスタンドに固定し、指先で何度も写真を拡大した。

写真の中では、二人がカフェ前の木陰に立っている。

八神煉はわずかに身をひねり、通りすがりの自転車を香椎早希からかばうように身を入れた。指先が、彼女の腕に触れそうなほど近い。

香椎早希は顔を上げて彼を見つめ、口元に薄い笑みを浮かべている。

「……この目よ」

竹内結菜は呟き、机の縁に爪を食い込ませた。

「八神煉のあの視線、どう見ても仕事相手に向ける顔じゃない」

何度も、何度も見返す。見れば見るほど、証拠は揺るがな...

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