第173章

邸宅の置き時計が九時を打った瞬間、竹内結菜は泣きわめく娘をベビーシッターに押しつけた。

足早に廊下を抜け、逃げ込むように洗面所へ。

内側から鍵をかけ、便器のタンク脇の隙間に指を差し入れる。そこから引きずり出したのは、使い古したスマホだった。

画面には未読が三件。送り主はすべて松井誠美。

この半月で、通話の頻度は三日に一度から毎日に変わった。ひどい日は一日に二回。

松井誠美は海外に長くいるほど、鬱憤を溜め込んでいく。

そして竹内結菜は、その火に油を注ぐのが楽しくて仕方がなかった。香椎早希の「罪状」を、日替わりで盛って聞かせる。

竹内結菜は深く息を吸い、折り返しをかけた。呼び出し音...

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