第174章

雲雀家旧宅の書斎には、卓上ランプの灯りがともっていた。

雲雀京介が扉を押して入ってくると、香椎早希は机に向かい、契約書に目を通していた。部屋着のまま、長い髪をゆるくまとめていて、細い首筋がすっと覗く。

物音に気づき、顔を上げる。

「おかえり」

「ただいま」

雲雀京介は机まで歩み寄り、手にしていた書類袋を置いた。声にはかすかな疲れが滲む。けれど同時に、肩の荷が下りたような安堵もあった。

「相続の手続き、全部終わった。親父の残した中核事業……今日から正式に、俺の名義になった」

「お疲れさま」

早希はそう言って、ぬるめの水をコップに注ぎ、彼の前へ差し出した。

雲雀京介が受け取ると...

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