第189章

松井誠美がその探偵と会ったのは、会員制クラブの個室だった。

ここは誠美がいつも使っている場所で、邪魔が入ることはない。

向かいに座る男は金井という姓で、五十代。眼鏡をかけ、濃いグレーのジャケットを羽織っただけの、どこにでもいそうな風貌だ。人混みに紛れたら、誰も振り返らないだろう。

だが、誠美は知っている。こいつは「普通」じゃない。

この業界で二十年以上。どんな依頼でも受け、手がけた件数は数え切れない。

腕が立つというより――口が堅い。

誠美が彼を選んだ理由は、それだけで十分だった。

金井は誠美の向かいで背筋を伸ばし、前に置かれた茶はすっかり冷めているのに、一口もつけていない。

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