第32章

雲雀京介は部屋の隅まで歩いていき、通話ボタンを押してスマホを耳に当てた。

受話器の向こうから聞こえてきたのは、竹内結菜の泣き混じりの声だった。

「京介……お腹がすごく痛いの。周りに誰もいない。お願い、病院に連れてって……」

雲雀京介は眉間に深い皺を刻み、香椎早希へ視線を投げる。そこに一瞬だけ、ためらいが走った。

「今日は外せない用がある。あとで秘書を向かわせる」

「秘書じゃ嫌……怖いの、京介。もし赤ちゃんに何かあったら、どうするの……?」

すすり泣きの声は濃く、結菜をいっそうか弱く、頼りない存在に見せた。

雲雀京介は「子ども」という単語に、目の奥を揺らす。葛藤の影がよぎり――そ...

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