第55章

家に戻った頃には、外はすっかり闇に沈んでいた。

雲雀京介は珍しく書斎へ行かず、香椎早希の後を追うように寝室へ入ってくる。

早希はコートを脱ぎ、洗面へ向かおうとした――その腰が、いきなりきつく抱きすくめられた。

背後からの抱擁。京介の顎が肩口に乗り、呼吸のたび、熱がじかに触れてくる。

「早希……まだ怒ってる?」

低い声。どこか媚びるような、甘さが混じっていた。

早希の身体は一瞬だけこわばった。すぐに瞳の奥の嫌悪を押し隠し、振り向いて首を横に振る。

「怒ってない。ただ……株のことを考えてたの。多すぎて、私に抱えきれるか不安で」

「それは、君が受け取って当然のものだ」

京介は彼女...

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