第71章

車の修理が終わったその日、香椎早希はひとりでオークションへ向かった。

会場は東区にあるプライベートな邸宅。入場と同時に仮面が手渡され、顔の半分が隠れる仕組みになっている。

香椎早希は後方の席を選び、オークションカタログに載ったネックレスの写真へ視線を落とした。

……一度、息を吐く。

カタログを閉じた、その隣に、すらりとした影が落ちた。

男が腰を下ろす。濃いグレーのスーツは無駄のない仕立てで、仮面が眉目を覆っているのに、骨の奥から滲むような圧だけは隠せない。

香椎早希は横目で一度見て、もう一度、確かめるように見た。

「八神煉?」

男はわずかに顔を向け、仮面の奥から深い眼差しを覗...

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