第8章

雲雀京介は片腕で香椎早希の腰を抱き寄せた。熱を帯びた掌が、布越しにもじりじりと伝わってくる。

彼は眉を伏せ、底なしの甘さと、どこか諦めにも似た色を滲ませる。

「悪かった、奥さん」

低い声が耳もとで弾けた瞬間、竹内結菜はぎゅっと拳を握りしめた。長い爪が掌に食い込みそうで、眉尻には抑えきれない嫉妬がにじむ。

こんな顔を、京介は一度だって自分に見せたことがない。

いつだって高い場所から余裕で見下ろし、何もかも掌の上で転がすような男だった。こんなふうに身を屈めるなんて。

竹内結菜に限らない。実の母である松井誠美ですら、息子からこの扱いを受けたことはないはずだ。

二人の女は視線を交わす。...

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