第83章

電話の向こうで、雲雀京介の声に混じった驚愕と怒りを、香椎早希ははっきりと聞き取った。

「お前ら、何が目的だ? 金か? 金ならいくらでも払う。だから……二人に手を出すな!」

誘拐犯の頭が鼻で笑い、スマホをスピーカーにしてから、香椎早希と竹内結菜の間の床へ放り投げた。

「雲雀社長。金の話はしねえよ。こっちは気持ちの話だ」

ねっとりとした悪意が声に絡む。

「奥さんと愛人が、いま俺の手の中にいる。面白いと思わねえか?」

竹内結菜はその言葉を聞いた瞬間、震えがさらにひどくなり、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

一方の香椎早希は、床のスマホを冷めた目で見下ろすだけだった。まるで、そこから聞こえ...

ログインして続きを読む