第85章

その言葉を聞いた瞬間、雲雀京介の身体がぴたりと固まった。

口を開きかける。弁解したい。最近は忙しかった、と。うっかり忘れただけだ、と。

けれど――そんな言い訳は、もう何度も口にしてきた。多すぎて、今さら自分の耳すら騙せない。

言葉に詰まって情けなく立ち尽くす彼を見ても、香椎早希の胸は一ミリも揺れなかった。むしろ、滑稽で。

後悔も焦りも、彼のそれはいつだって安い。わざわざ目を留める価値すらない。

香椎早希は踵を返し、気の利く妻の顔を貼りつける。

「ほら、早く身支度して。顔洗って、着替えて」

そう言いながらクローゼットへ向かい、手慣れた動きで今日のスーツとネクタイを選び、ベッド脇に...

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