第87章

「高橋泉? うちに高橋泉なんていたか?」

「原田正夫? ……聞いたことねえな」

「どいつもこいつも知らねえ名前だぞ。どこから湧いてきたんだ?」

周りの作業員たちはそこまで聞いて、何かを察したようにざわりと低い声で囁き合った。

人混みの中に立つ石川三郎は、顔面から血の気が引き、今にも逃げ出したい一心だった。

存在しない十数人分の名前を読み終えてから、香椎早希はようやく名簿を下ろし、石川三郎の真っ青な顔へ視線を落とす。

「石川三郎。名簿を私に提出して、あなたが代わりに配るって言ったわよね」

声は大きくない。けれど、胸の奥まで突き刺さるような圧があった。

「今ここで教えて。――この...

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