第90章

香椎早希の視線が、栗野愛奈の上でしばし止まった。

賢い子だ。目を引くほど華やかな顔立ちを、あえて素朴な服装で抑え、清楚で無垢な印象を作ろうとしている。だが――残念。

その瞳の奥でちらつく欲が、もうとっくに彼女を裏切っていた。

「栗野さん。履歴書を見る限り、これまで専門の家事代行として働いた経験はないのよね?」

栗野愛奈は緊張したように服の裾をきゅっとつまみ、慌てて言い訳を重ねた。

「香椎さん、確かに他所で働いたことはありません。でも、家では小さい頃から弟の世話をしてきました。洗濯も料理も掃除も、何でもやってきたので、経験はあります! 絶対に役に立てます!」

香椎早希はその返答を聞...

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