第91章

松井誠美は、背を向けたまま雲雀明山のために硯をすっている栗野愛奈を、釘付けになって睨みつけた。

栗野愛奈の服は身体の線に沿うように仕立てられているだけじゃない。襟元まで、わざと数センチ下げてある。

すりすり、と墨をするたびに、隠しきれない曲線がちらついて――そのたび、誠美の目の奥がきりきりと痛んだ。

だが、誠美がいちばん耐えられなかったのは、雲雀明山の表情だ。

家ではいつも仏頂面で、こちらにろくな態度も見せない男が。

いま、この瞬間だけは、妙に辛抱強く――

雲雀明山が、あの女に字を教えている。

その事実が誠美の理性を焼き切った。

「……何してるのよ!」

誠美は手にしていたブ...

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