第97章

電話の向こうが、数秒だけ静まり返った。

香椎早希はシートに身を預け、指先でトントンとテーブルを叩く。声には、わざとらしくない程度の困惑を滲ませた。

「産科? お義母さんが産科に行く理由なんてある?」

「俺にも分からない」

雲雀京介の声は、やけに低い。

「遠目に見ただけだけど……あの人の横に、例の警備員もいた」

香椎早希は一拍だけ黙り、それから小さく笑った。

「考えすぎよ。お義母さんの年齢なら婦人科の用事だって普通にあるし。間違えて並んだだけじゃない?」

「間違えて……?」

「うん」

香椎早希は断言するように言った。

「あなたも知ってるでしょう。お義母さんの性格で、ひとり...

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