第99章

松井誠美の病は唐突だった。だが香椎早希には、むしろ都合がいいタイミングに思えた。

翌朝。

早希は顔を洗い、地味な部屋着に着替えて、ようやく寝室から出てきた。

血の気の引いた頬。耳の後ろでゆるくまとめた髪。

全身から、疲れと静けさがにじんでいる。

使用人たちは彼女の姿を見ると、腫れ物に触るように挨拶した。

早希は松井誠美の部屋の前で足を止め、控えめに、こんこんと扉を叩く。

――返事を待ってから、そっと入った。

松井誠美はベッドの背に寄りかかっていた。顔色はろうのように白く、枕元には薬瓶がいくつも並んでいる。

早希を見るなり、彼女は一瞬だけ目を見開き、すぐに顔を背けた。

「ま...

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