第6章

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 パリの冬の夜。冷たい雨が刃のように降り注ぐ。

 私は竹内池が買ってくれた厚手のコートを強く引き寄せ、手には薬局で買ったばかりの抗炎症薬を握りしめていた。

 三角家を出てから、もう三日が経つ。

 ここには、平野信の氷のような視線も、三角静留の悪意に満ちた笑みも、あの窒息しそうな地下室のカビ臭さもない。

 傷口はまだ疼く。それでも、かつてないほどの自由を感じていた。

 薄暗い路地を通りかかった時、雨の匂いに混じって強烈な血の気が漂ってきた。

 私は本能的に足を止める。

 頼りない街灯の明かりを頼りに目を凝らすと、泥水の中に男が一人、倒れていた。

 仕立ての良いハンドメイド...

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