両親と夫に骨髄提供を強要された後、妹に「仮病だったんでしょう」と言われた

両親と夫に骨髄提供を強要された後、妹に「仮病だったんでしょう」と言われた

渡り雨 · 完結 · 22.4k 文字

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紹介

実の両親に引き取られ、私はようやく、欠けていた愛情を注いでもらえるのだと期待していた。

けれど、私が何をしても、両親は私があの義妹をいじめていると責めるだけ。夫はただ、憎々しげに私を見つめるだけだった。

両親は私を毒婦だと思い、性根が腐っていると見なした。そして、義妹が白血病だと診断されると、私に骨髄を提供するよう強要した。

私は無理やり食事をさせられ、運動させられ、半月で5キロも太らされた。

そんなある日、義妹が突然、私を見てこう言った。
「お姉さん、実は私、白血病なんかじゃないの。ただあなたを弄んでいただけ。あなたが手術台で死ぬのを待ってる。そしたら、私がお義兄さんと幸せになるから」

吐き気がするほど気持ち悪くて、死んでしまいたかった。

でも、死ぬわけにはいかない。

私は生きなければ。

生きて、この地獄から這い出してやる!

チャプター 1

 年に一度の健康診断。

 誰もが私立病院の特別病室に集まり、結果を待っていた。

 鼻をつく消毒薬の匂い。木村美奈子は、きれいにカットされた林檎を愛おしそうに妹の三角静留の口に運んでいる。

 父もまた、慈愛に満ちた目で妹を見つめていた。

「三角惠子、その仏頂面はどうにかならないのか? 見ているだけで不愉快だ」

 平野信の声には隠しきれない苛立ちが滲んでおり、彼は私に視線さえ向けようとしない。

 採血を終えたばかりの指先を、綿球で強く押さえる。血の気が引き、指先が白く変色していた。

 何か言おうと口を開きかけたその時、木村美奈子が甲高い声を上げた。

「静留が目眩を起こしたわ! 低血糖じゃないの? 早く、砂糖水を持ってきて!」

 その言葉を聞いた瞬間、平野信の表情が一変する。さきほどの冷徹さが嘘のように、大股で駆け寄り、壊れ物を扱うような手つきで三角静留を支えた。

「大丈夫か? さっきまでは顔色が良かったのに」

 皆の中心で愛されている妹を見つめながら、私は冷たい壁に背中を預けた。

 これが、私の日常。

 血を見るだけで倒れそうになるほどの目眩を覚えても、必死で嘔吐感をこらえ、意識を保つしかない。

 彼らが私を心配することなどあり得ないのだから。

 たとえ私が三角家の、父と母の本当の娘であったとしても。

 夫である平野信にとってさえ、私は「義姉」であり「妻」という名の、ただの透明な背景に過ぎないのだ。

 幼い頃、人身売買組織に誘拐された後、両親はすぐに養女を引き取り、私の空席を埋めたらしい。

 数年後に再会した時、長年欠けていた家族の温もりを埋めてもらえると思っていた。

 けれど現実は残酷だった。彼らは私を、足元の蟻程度にしか思っていなかったのだ。

 妹を虐める腹黒い女。そんな残忍な姉は、死んだら地獄に落ちるのだと彼らは信じている。

 母は何度も失望の眼差しを私に向けた。養父母に育てられたせいで、血は繋がっていても、骨の髄まで底辺層の卑しい根性が染み付いているのだと。

「お姉ちゃんなんだから、少しは分別を持ちなさい。妹を虐めるなんて……あの子はこんなに素直で、こんなに可哀想なのに」

「これだけの待遇を与えられ、平野信と結婚までさせてやったのに、まだ不満なのか」

 父は冷たい顔で私を追い出そうとし、最後は妹のとりなしでようやく怒りを収めるのが常だった。

「静留の方がよほど心が綺麗だ。お前ときたら……」

 嘲笑を浴びせられる日々。

 弁解はしなかった。何を言っても無駄だからだ。

 妹が私のベッドに針を仕込んだことを訴えても、彼らは嫌悪感を露わにし、私が被害者を演じているだけだと決めつけた。

 だから、もういい。

 私は呼吸をしているけれど、心は地獄の底に沈んだままなのだ。

——

 病室のドアが開き、検査結果の束を手にした主任医師が入ってきた。表情は険しい。

「あまり芳しくない結果です」

 医師は眼鏡の位置を直しながら言った。

「血液検査の結果、お二人のうち、お一人が白血病を患っていることが判明しました。直ちに治療が必要です。ですが、不幸中の幸いと言うべきか……もうお一方との適合性が確認されました」

 空気が一瞬にして凍りついた。

 次の瞬間、三人の視線が一斉に私へと突き刺さる。

 母である木村美奈子が眉をひそめた。その声色に心配の色はなく、予期していたトラブルに対する嫌悪だけがあった。

「惠子、あんたなんでしょ? 普段からもっと善良に生きなさいって言ったのに。嫉妬して他人を陥れてばかりいるから、そんな病気にかかるのよ」

 父の三角成俊も重苦しい表情で口を開く。

「まあいい、治療費は家が出してやる。今夜は帰らなくていい、そのまま入院しろ。出来の悪い娘だが、病気を治してやるくらいの情けはある。だが骨髄に関しては他を当たれ。私たちの骨髄を提供して、身体が弱るような真似はさせないでくれよ」

 そして、私の夫である平野信は、冷ややかな一瞥をくれただけだった。まるで壊れた家具の処分方法を話すかのように、淡々と言い放つ。

「静留は身体が弱いんだ、悪影響を与えるなよ。これからは執事に様子を見に行かせる」

 心臓を巨大な手で鷲掴みにされたような激痛が走る。息ができない。

 彼らは誰一人として、本当に私が病気なのか確認さえせず、この「厄介払い」の算段を始めている。

「恐れ入りますが、誤解されているようです」

 医師が気不味そうに咳払いし、彼らの勝手な裁判を遮った。

「病気の疑いがあるのは……三角静留アさんの方です」

 その瞬間、場がパニックに陥った。

「なんですって? 静留が? あり得ない!」

 木村美奈子は狂ったように駆け寄り、医師の胸ぐらを掴んだ。

「何かの間違いでしょ! 静留はあんなに健康で、あんなにいい子なのに!」

 平野信の顔色が一瞬で蒼白になる。

 彼は邪魔だとばかりに私を突き飛ばした。壁に激突し、肘に走る鋭い痛みに顔をしかめる。

「最高の薬を使え。最高の専門医を呼べ。いくらかかっても構わない、必ず彼女を治すんだ!」

 平野信の声は震えていた。

 目の前で繰り広げられる茶番に、乾いた笑いが込み上げてくる。

 不意に、母が私の方を振り向いた。まるで我が子を傷つけられた草原の雌ライオンのような形相で。

「先生、さっき適合したって言ったのは……惠子のこと?」

 医師が重々しく頷く。

 その瞬間、全身の血液が凍りつくのを感じた。

 混乱の中、平野信の腕に抱かれた三角静留は、青白い頬に涙を伝わせながらも、人垣の隙間から正確に私を見据えていた。

 彼女の口元が、誰にも気づかれない角度で微かに歪む。そして音のない言葉を私に送ってきた。

『ほらね。血の繋がりなんて無意味。愛されている方が勝ちなのよ』

 三十分後、特別病室。

 専門医たちによる会診が終わり、一刻も早い骨髄移植が必要だという結論が出た。

 室内の気圧が押し潰されそうに低い。

 木村美奈子は泣き腫らし、三角成俊はチェーンスモーカーのように煙草を吸い続けている。

 突然、平野信が顔を上げた。その深淵のような瞳が、私を死神のように捉える。

「惠子」

 初めて聞くような親密な呼び方。けれど、それは背筋が凍るような響きだった。

「一刻も早く、静留に骨髄移植をしてくれ」

 木村美奈子が救いの糸を見つけたかのように、猛然と私に飛びかかってきた。腕を掴む指の爪が、肉に食い込む。

「そうよ! そうよ! あんたは健康なんだから、骨髄の少しぐらい減ったってどうってことないでしょ! 姉なんでしょ、あんたが助けなきゃ誰が助けるの!」

「私は……」

 拒絶しようと口を開いた瞬間。

「決まりだ」

 父の三角成俊が煙草を揉み消し、反論を許さない口調で決定を下した。まるで今夜の夕食の献立を決めるかのような気軽さで。

「惠子、これはお前が三角家の娘として果たすべき義務だ」

 誰一人として、私の意思など聞こうとしない。

 彼らの目には、私が存在する唯一の価値は、この瞬間に三角静留のための「交換部品」となることだけだと映っているようだ。

 私は平野信を見つめた。三年間、同じベッドで眠ったこの男の目に、少しでも躊躇いがないか探そうとした。

 だが、無駄だった。

 彼はただ冷徹に私を見下ろし、当然の権利であるかのように告げた。

「お前は頑丈だ。静留には時間がないんだ。お前が冷血な人間だと思わせないでくれ」

 冷血?

 母に掴まれ、青あざができ始めた自分の腕を見つめる。

 心の中に残っていた最後の一灯が、完全に消え失せた。

 そうね。

 冷血なのは、私だけ。

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