第7章

 海城国際展示場。スポットライトが白昼のように眩しく降り注ぐ。

 半年ぶりの帰還。だが、私はもう、かつての唯々諾々とした『平野の奥さん』ではない。

「緊張するか?」

 古崎時が、低く落ち着いた声で囁く。

 私は視線を落とし、身に纏った『涅槃』と名付けられたオートクチュールを見つめた。黒のベルベット素材が、今の私の引き締まった腰のラインを艶やかに縁取っている。

 会場中の視線が、まるで磁石に吸い寄せられるかのように私に張り付いていた。驚艶、疑惑、そして信じられないといった表情。

 人波が自然と左右に割れ、一本の道ができる。その突き当たりに立っていたのは、かつて命を懸けるほど愛...

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