第3章

恵美視点

桜都にある陸の部屋は、狭いけれど居心地がいい。ワンベッドルームに小さなキッチン、そしてソファとコーヒーテーブルを置くのがやっとのリビング。中に入ると、すべてが綺麗に片付いていて、整頓されていることに気づく。『ほんっと、潔癖症なんだから』……なんて思うけど、思わず笑みがこぼれた。

「ソファで寝ろ」彼は私を見ずにそう言った。

「嫌」私はバッグを床に放り投げ、まっすぐ寝室に向かった。

「恵美、ソファで寝ろと言っただろう!」

私はもう寝室のドアを押し開けて中に入り、遠慮なく彼のベッドに腰を下ろしていた。「嫌だもん」

陸が暗い顔で追ってくる。「ここは俺の部屋だ」

「今は私たちの部屋よ」私は靴を蹴り脱ぐと、ベッドに寝転んだ。「どこにも行かないから」

「お前っ――」彼は歯を食いしばる。「こんなこと、許されると思うな!」

私はうつ伏せになって、ベッドから彼を見上げる。「どうするの? 力ずくで私を追い出す?」

陸の目に、危険な光が宿った。彼はクローゼットに歩み寄り、引き出しを開けて黒いベルトを取り出した。

「殴るの?」彼の手にあるベルトを見ても、私は怖がるどころか、むしろ瞳に興奮の色を浮かべていた。「それがあなたの気持ちを楽にするなら」

「私は受け入れる」

陸は凍りつき、ベルトが手から滑り落ちて床に落ちた。「……今、なんて言った?」

私はベッドの上で身を起こすと、彼のシャツのボタンを外し始めた。「言ったでしょ、ベッドの上で殴りたいなら、全然構わないって」

「恵美、お前、何を――」

「あなたの服を脱がせてるの」私の指が器用に次々とボタンを外していく。「見ればわかるでしょ?」

彼は私の手を押し返そうとするけれど、もう私は彼のシャツを肩から引き剥がしていた。彼の胸に唇を押し当て、軽く肌を噛む。

「くそっ――」彼は低く悪態をついたが、もう抵抗はしなかった。

私の手が彼のベルトに伸びたとき、ついに彼は完全に降伏した。彼の手が私の顔を包み込み、激しくキスしてきた。

私たちは自然にベッドに倒れ込んだ。陸の手が私の服に触れ、私も彼のシャツを肩から滑らせた。彼のキスは罰を与えるような激しさを帯びていて、私も同じ激しさで応えた。

情熱の渦の中で、彼の瞳に何かが閃くのが見えた。怒り。痛み。そして、私には見覚えがありすぎるほどの衝動。

「お前を憎むべきなんだ」彼は私の上で動きを止め、両腕で私の体を挟むようにして、私を見下ろしながら言った。呼吸は荒く、その瞳には危険な光が宿っている。「罰を与えるべきなんだ」

陸の手が震えながら上がった。まるで何かと戦うように、拳を握りしめて。顎の筋肉がこわばるのが見える。私は身じろぎもせず、ただ静かに彼を見つめた。

「いいよ」私は囁いた。「それであなたの気が済むなら」

彼の拳は、空中で震えていた。一秒、二秒、三秒。そして振り下ろされた手は、私を殴るのではなく、優しく私の頬を撫でた。

「くそっ」絶望に満ちた声で、彼は低く罵る。「できない。お前を憎んでいても、傷つけることなんてできない」

そして彼は、今まで以上に激しく私にキスをした。まるで自分の弱さを罰するかのように、あるいは私の存在を確かめるかのように。

彼の体は若くて力強く、生命力に満ち溢れている。前世で一緒にいた頃の記憶とは、まるで違う。あの頃、ようやく私を救い出してくれた彼は、とても慎重で、優しかった。前世の私は、長い間の苦しみで心も体も傷ついていて、陸はいつも私を大切な宝物のように、そっと扱ってくれた。

でも、今の私は彼の激しさに応えられる。私が受け止めきれないなんて心配することなく、彼は力強く私の中に入ってこられるのだ。痣が残るほど強くキスされれば、私も同じくらい激しくキスを返す。彼が私の首筋に顔を埋め、必死のリズムで体を動かすとき、私は脚を彼の腰に絡め、彼が与えるすべてを受け止めることができる。

私たちの体は、まるで互いのために作られたかのように、完璧に重なり合った。絶頂が二人を洗い流すとき、彼は私の耳元で名前を囁く。

「ああ、恵美……」その後、彼は額を私の額に押し当てて喘いだ。汗で髪が額に張り付き、その瞳にはまださっきまでの情熱の残り火が揺らめいている。「お前は、一体何をしたい?」

『二人ともを、救うのよ』……そう思ったけれど、口には出さなかった。

その後、私たちはどちらも口を開かなかった。陸は私の隣に横たわり、腕を枕にして天井を見つめている。

「これは、何の意味もないからな」ついに彼が静かな声で言った。

「わかってる」

「俺はまだ、お前を憎んでる」

「わかってるわ」

彼は首を巡らせて私を見る。「じゃあ、なんでお前は……」

「あなたが欲しいからよ」私も彼の方を向き、その目をまっすぐに見つめた。「あなたが私を憎んでいても、それでも私はあなたが欲しいから」

陸は長いこと黙っていた。

「ここには住まわせない」やがて彼は言った。

「もう住んでるわ」

「恵美――」

「陸」私は彼の言葉を遮る。「私は出て行かない。あなたが何を言っても、何をしても、私はここを動かない」

彼は私を見た。その瞳には、複雑で読み取れない何かが宿っていた。

「わかった」ついに彼は言った。「だが、これは一時的なものだ。ただ……」

「ただ、何?」

「お前がこれ以上、おかしなことをしないか見張っておく必要があるからだ」

『嘘つき』……でも、それを指摘はしなかった。

「じゃあ、ここで寝ていい?」私はベッドをぽんぽんと叩きながら尋ねた。

陸の顔が赤くなる。「お前はソファで寝ろ」

「でも、さっき――」

「あれは事故だ」

私は笑った。「わかったわ。気が変わったら、いつでも呼んでね」

リビングに行こうと立ち上がって服を着始めると、彼が私の手首を掴んだ。

「待て」

彼を振り返る。

「お前……」彼はためらった。「今夜は、ここで寝てもいい」

私は微笑んで、すぐにベッドに横になった。彼は自分自身に腹を立てるかのように、私から顔を背けた。

それからの二週間は、私たち二人ともが予想していなかったパターンに落ち着いていった。

毎朝、私は早起きして朝食を作る。ちゃんとした食事。卵、トースト、フルーツ。最初の数回、陸はそれを拒否しようとした。

「お前に世話される必要はないと言ったはずだ」

「じゃあ、世話だと思わなければいいじゃない」私は彼の前に皿を置きながら言った。「私の『監禁者』が、監禁を続けられるくらい健康でいられるようにしてるだけだって思って」

彼は奇妙な顔で私を見たが、それでも食事には口をつけた。

食料品の買い物は彼のクレジットカードでする。それについても彼は文句を言おうとしたが、囚人には食料が必要だと指摘してやった。野菜をたくさん、脂肪の少ないタンパク質、全粒穀物を買う。彼を救おうと必死だったあの数ヶ月、すい臓がんの予防について読んだことのあるものすべてだ。

「なんでこんな緑色のものばっかり買ってくるんだ」彼は買い物袋を見て文句を言う。

「だってあなたは二十二歳なのに、大学生みたいな食生活してるんだもの。体はいつまでも若いままじゃないのよ」

毎晩、私は夕食を作る。陸は気にしていないふりをするけれど、私がキッチンを動き回るのを彼が見ているのに気づいていた。私が何かをかき混ぜていると、時々後ろから近づいてきて、腰に手を回してくる。

「これも罰の一環だ」彼は私の首筋に囁きかける。

「んー」私は彼の胸にもたれかかった。「ひどい罰ね」

彼の腕が私をきつく抱きしめる。「馴れ馴れしくするなよ、恵美。これは……お前が思っているようなものじゃない」

でも、彼の行動はまったく違うことを物語っていた。

夜になると、その見せかけはさらに薄っぺらくなる。

今夜も、彼がまた私の腰に腕を回して眠りに落ちた後、私は彼の寝顔を見つめ、ふと、痛ましくも甘かった前世での日々を思い出すのだった。

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