第5章

恵美視点

その書類を握りしめたまま、私はただ座っていた。吐き気がした。彼は最初からずっと、ロンドンへ逃げる計画を立てていたのだ。一度目の人生の時と、まったく同じように。

私は何て愚かだったのだろう。時を戻せば、すべてを変えられると本気で信じていた。でも現実は、同じ道を辿ろうとしている。

未来を知っていれば助けになるって。なのに今、私はここにいて、以前すべてを台無しにしたのと同じ忌々しい書類を睨みつけている。

シャワーの音はまだ続いていた。私は彼のベッドに座り、膝の上の書類を抱え、吐き気と戦っていた。またこれが起きるんだ。

陸が入ってきた。書類を持った私を見るなり、彼は凍...

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