第5章

 高橋義和が煙草に火をつけると、車内にニコチンの匂いが立ち込めた。

 私達の間には、まるで目に見えない壁のように、息が詰まるほどの沈黙が広がっている。

 彼は眉間に深い皺を寄せていた。

 私は運転席に身を預け、あてもなく窓の外に視線を投げる。

 道中ずっと続いた意図的な嫌がらせに、今となってはもう、こちらも興が削がれてしまっていた。

 結局、彼を不快にさせることは、同時に自分自身を不快にさせることでもあったのだ。

 長年の愛情が、こうして車内の冷たい空気の中で終わりを告げようとしている。

 私はバッグから煙草の箱を取り出し、一本を抜き取って火をつけた。立ち上る煙の向こうで、義和...

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