第7章

「佐藤穂乃美、高橋義和、三番窓口までお越しください」

無機質な電子音声が響いた。

私たちは前後して窓口へ向かうと、職員から離婚届を一枚手渡された。ペン先が紙の上を滑る音がやけに鮮明に聞こえる。私は自分の名前を書き記し、高橋にペンを渡した。彼はそれを受け取ると、指を微かに震わせながらも、所定の欄に署名した。あまりにもあっけない手続きだった。涙もなければ、言い争いもない。まるで、ただの事務処理をこなしているかのようだった。

「手続きは以上となります」

職員が事務的に告げる。

「一ヶ月後に離婚証明書を受け取りに来てください」

高橋が立ち上がって去ろうとする。私は慌てて彼を呼び止...

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