第103章

病室の空気は極限まで張り詰め、誰もが床に膝をつく絵里奈を見下ろしていた。みっともなく這うように出ていくのを、今か今かと待っている。

知代の手の果物ナイフは、まだ自分の喉元に突きつけられたまま。充血した瞳に宿るのは、迷いのない決意だけだった。

絵里奈が出ていかないなら、本当に引く。

その刃は、ためらいなく皮膚を裂く。

絵里奈は床に手をつき、ふらつきながら立ち上がった。

さっきの動きで腹の傷がまた開いた。温い液体がガーゼを滲ませ、ぬるりと肌に貼りつく。

痛い。

痛すぎる。

けれど、その肉の痛みが、濁っていた頭をわずかに冷やした。

母は死にたがっている。

腎臓が「汚い」と思って...

ログインして続きを読む