第105章

ドンッ!

火が、一瞬で噴き上がった。

ガソリンを浴びた薔薇の茂みは最高の導火剤だった。赤い炎が、さっきまで絢爛だった淡いピンクを容赦なく呑み込んでいく。

黒煙が渦を巻いて天へ伸び、陽光を塗り潰した。植物が燃えるパチパチという音が、悲鳴みたいに耳を刺す。

絵里奈は頬を地面に押しつけたまま、目を逸らせずに見ていた。

祖父が一本一本、手で植えた薔薇が、炎の中でねじれ、黒く焦げ、灰へと崩れていくのを。

古びた木のブランコも火の海に囲まれ、縄がぷつりと切れて、どさりと地面へ叩き落ちた。

「……おじいちゃん……」

喉の奥から漏れたのは、砕けた嗚咽だった。

子どもの頃の夏、祖父が抱いてブ...

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