第109章

真琴は伏せたまぶたの奥で、差し出された離婚協議書をなぞるように視線を走らせた。

「離婚?」

くつり、と笑う。そこにあるのは温度のない薄笑い――背筋が凍るほどの冷たさだった。

真琴は手を伸ばし、長い指で紙を挟むと、焦らすような動きで二つに裂いた。

「冬月正明、お前……ボケた老人か?」

破れた紙片をひらりと持ち上げ、真琴はそのまま冬月正明の顔へ散らす。

「最初に俺のベッドに這い上がってきたのは、あいつのほうだ。土下座して、俺に『嫁にして』って泣きついたのも、あいつだろ。今さら出ていく? 俺に許可を取ったのか?」

真琴は一歩踏み込み、冬月正明を壁際へ追い詰める。男は反射的に後ずさった...

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