第110章

病院の裏手、人目につかない静かな庭。

深夜の冷たい風が唸りを上げて吹き抜け、地面の枯れ葉を巻き上げていく。

真琴はざらついた樹皮にもたれ、指に煙草を挟んでいた。足元には吸い殻が七、八本、散らばっている。

シャツはまだ汚れたまま。乾いて硬くなった血が広い範囲で肌に貼りつき、吐き気を催す鉄臭さを放っていた。

絵里奈の血だ。布まで染み込んでいる。

真琴は煙を強く吸い込み、辛い煙が肺の奥へ突き刺さった瞬間、喉が焼けた。

「……げほっ、げほっ……!」

腰が折れるほど咳き込み、涙が滲む。だが、骨髄から滲み出るような寒気だけは、どうしても引っ込まない。

手が震えていた。抑えようとしても無駄...

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