第121章

絵里奈の顔から、さっと血の気が引いた。

――自分は、真琴を愛しているのか。

青春の頃、絵筆をそっと置いてまで、盗み見るように目で追った男。

……違う。

それは汚れていて、赦されない罪だ。

自分なんかが、真琴を愛していいはずがない。

真琴に対して芽生えるどんな小さなときめきも、佳奈への裏切りになる。

けれど――真琴をきちんと支えるためには。

自分は、彼を愛さなければいけない。

お姉ちゃんは、きっとそれを望む。

深く愛してこそ、傍にいられる。守れる。願いを叶えられる。

そうだ。

自分は、真琴を愛さなければならない。

「……私は、愛してる」

絵里奈は勢いよく顔を上げた。...

ログインして続きを読む