第142章

絵里奈は口の中の粥を飲み込む間もなく、書斎の扉をどんどん叩いた。智哉の無事を確かめたくて、身体が勝手に動いた。

「小野彰……智哉は、どうなったの?」

顔を上げると、唇の端に粘つく粥が残っている。絵里奈の視線は、傍らに立つ小野彰へ釘づけになった。

小野彰はわざと目を伏せた。絶望と縋りつくような渇望を湛えたその瞳を、正面から受け止める気はない。

「奥様、それは社長のお考えです。私の口からは申し上げられません」

それきり、小野彰は黙った。

沈黙は、罵倒よりも残酷だった。

絵里奈はスプーンを握った手をぶるぶる震わせる。

智哉がどんな目に遭わされているのか――考えたくないのに、想像が勝...

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