第147章

赤羽は眼鏡を外し、目の前で傷だらけになっている智哉を見つめて、長く息を吐いた。やがて、あの頃の出来事を語り始める。

「犯人の名は綾部隼仁」

智哉の瞳孔が、ぎゅっと縮む。

「冬月グループの前任の財務責任者だった。公金横領が発覚して解雇された男だよ。陰気で、偏執的で……自分の人生を壊したのは冬月家だと、勝手に決めつけていた」

赤羽の視線が遠くなる。記憶の底へ沈むように。

「十年前の話だ。復讐と、金のために……当時まだ中学生だった佳奈と絵里奈を誘拐した」

智哉は拳を握り潰すほど強く握りしめた。負傷した右手が、針で抉られるように痛む。だが、そんなものは感じない。

「警察が二人を見つけた...

ログインして続きを読む