第149章

数日後。裕太と智哉がN市へ戻って最初に向かったのは、狩野邸だった。

裕太は屋敷の側壁沿いに車を寄せて停める。助手席の智哉は、手の中の麻酔薬を震える指で調整していた。

遠く、本館の灯りだけがやけに明るい。裕太はそれを睨み、声を極限まで落とす。

「情報じゃ、真琴は今夜B市に行ってる。……けど、嫌な予感がする」

静かすぎる。

ここはN市でも屈指の厳重な警備を誇る屋敷だ。それが今夜に限って、まるで最初から二人を通すつもりでいるみたいだった。

「違和感があろうがなかろうが、チャンスは今しかない」

智哉は注射器を袖口に滑り込ませ、目を据えた。

「絵里奈は、待ってくれない」

裕太はそれ以...

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