第25章

「腹が減ってないなら、食うな」

真琴は手元のワイングラスを乱暴に掴み上げた。グラスの中で、深紅の液体が照明を受けてゆらりと揺れる。

何の前触れもなく、腕が振り上げられた。

バン!

高価なクリスタルグラスが、絵里奈の目の前のテーブルへ叩きつけられる。

静まり返った高級レストランで、ガラスの炸裂音だけが異様に鋭く響いた。破片が四方へ散り、赤い酒が血みたいに跳ねる。

絵里奈の顔へ――容赦なく。

血の気のない頬を伝って落ち、買ったばかりのキャリアスーツに染みを作る。ぞっとするほど、生々しい色。

細かなガラス片が頬と手の甲を切り、粒のそろった血がすぐ滲んだ。ワインと混ざり、つう、と流れ...

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