第35章

午前二時。

真琴の段取りどおり、屋敷のセキュリティは「停止」していた。

灯りが生きているのは、主寝室の大きなガラス扉の向こう――庭園の地灯が数基、鈍い光を落としているだけ。

絵里奈はガラス扉の前に背を預け、座り込んでいた。目は充血し、乾き切っている。

十二時間。

ここで、ただ待った。

虚ろな眼差しは死人と変わらない。

今夜さえ、越えられれば。

『永遠』シリーズが潰れてもいい。真琴に壊されてもいい。

賢治さえ現れなければ、まだ取り返しはつく。

――そのとき。

テラスの手すりのあたりで、影が揺れた。

絵里奈の瞳孔が、ぎゅっと縮む。

影は柵を乗り越えた。動きは鈍く、不器用...

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