第49章

「点滴を入れろ」

真琴の声は相変わらず冷えきっていた。けれど、その奥に、かすかな苛立ちが滲む。

「死なせるな。死んだら安すぎる」

「生かせ」

小野彰は、胸の奥に溜めていた息をやっと吐いた。手のひらのスマホが滑り落ちそうになる。

「……はい」

ナースが駆け込んできて、針を絵里奈の――恐ろしいほど細い手の甲へ突き立てた。

冷たい液体が血管を伝い、体内へ流れ込む。

絵里奈は目を覚まさない。

ただ、昏睡の底で眉をひそめ、目尻から一滴、涙がこぼれた。

生きろ。

死ぬことさえ、贅沢なんだ。

なら、生きるしかない。死体みたいに、生きていく。

三日後、絵里奈は退院した。

狩野邸に...

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