第54章

絵里奈には、どれほど時間が経ったのか分からなかった。

一時間かもしれない。丸一晩かもしれない。

周囲は、あのぬめついた音で満ちている。湿って冷たい舌が、無数に耳の奥を舐め回しているみたいな――嫌な気配。

傷口は錐で抉られるように痛み、折れた肋が呼吸のたびに神経を踏みつけた。

失血の眩暈で思考は濁り、意識がどろどろに溶けていく。

何かが、身体の上に落ちた。

ひんやりして、やわらかい。

――蛇?

絵里奈ははっと目を開いた。けれど何も見えない。闇の中で、無数の緑の光だけがこちらを見つめている。

「来ないで……」

とうとう崩れた。声は掠れ、砕ける。

「来ないで……」

死ぬこと...

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