第66章

「ここは狩野邸。私はここの奥様――ううん、未来の奥様よ」

瑠璃はハサミを置き、ヒールの音をわざと響かせながら近づいてくる。車椅子の絵里奈を見下ろす視線は傲慢で、瞳に宿る悪意はもう隠しもしない。

「聞いたわ。あの日、クラブで真琴に骨を折られたんですって? かわいそう」

瑠璃が手を伸ばし、絵里奈の頬に触れようとする。だが絵里奈は顔を背け、指先を避けた。

「触るな!」

絵里奈の低い唸りに、瑠璃は怒るどころか、いっそう楽しげに笑った。バッグから紙ナプキンを取り出し、さっき触れ損ねた指を、汚れでもついたみたいに拭う。

「今日は謝りに来たの」

無垢を装ってぱちりと瞬きをし、瑠璃は肩をすくめ...

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