第68章

植田淳史の笑い声が、がらんとした廃倉庫に反響する。耳障りで、狂気じみていた。

片腕には、怯えて震えるふりを続ける瑠璃を抱き寄せたまま。もう片方の手は拳銃をぶれずに構え、黒い銃口を絵里奈のこめかみにぐい、と押し当てている。

金属は氷みたいに冷たい。けれど、いま絵里奈の胸に広がる冷えは、それよりずっと深かった。

真琴は、助けない。

たぶん――自分は死ぬ。

でも、それでいい。真琴が無事なら、佳奈お姉ちゃんは悲しまない。

それだけで、十分だ。

「いいか、狩野さん」

淳史はカメラへ顔を寄せる。頬の刀傷が、興奮で歪んだ。

「時間はねえ。十秒だ。瑠璃か、それとも――お前の前の女を殺した、...

ログインして続きを読む