第75章

「放せ」

真琴の声が飛んできた。低く、しかし無視できない圧を孕んでいる。

「淳史。これは俺とお前の問題だ。彼女を放せ。そうしたら……お前は逃がしてやる」

だが、それが恐怖から出た言葉だと見抜いたのは淳史だけだった。

真琴はこの女を気にしている。

だから、傷つけられるのが怖い。

「逃がしてやる? 俺がそんな簡単に騙されると思ってんのか」

淳史は狂ったように笑い、刃をさらに押し込んだ。

「ここまで来たら、生きて帰る気なんざ最初からねえ! でもな、お前が道連れなら損はしねえんだよ!」

絵里奈は無理やり顎を上げさせられ、向かいの真琴を見た。

彼の目にあるのは焦り。

それは、別の...

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