第76章

バンッ! バンッ!

混乱のさなか、淳史は銃で牽制しながら、あらかじめ用意していたボートへと退いた。

跳弾が真琴の上腕をかすめ、肉をえぐって血が弾ける。灼けるような痛みが走ったはずなのに、彼は眉ひとつ動かさない。

ただ腕の中の女を強く抱きしめ、肩に突き立った凄惨な傷口を手のひらで押さえつけた。溢れ出る血を、どうにか堰き止めようとして。

「寝るな……絵里奈、俺を見ろ! 寝るな!」

真琴の声は掠れて、壊れかけていた。自分でも気づかない恐慌が、そこに混じる。

煙が薄れるころには、淳史のボートは海面に白い航跡を引き、遠ざかっていく。

「社長! 逃げました!」小野彰が駆け寄り、血まみれの二...

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