第77章

瑠璃の手が壁に叩きつけられた。ずきり、と骨まで響く痛み。

彼女ははっと顔を上げ、目の前の苛立った男を信じられないものを見るように見つめる。

「真琴……?」

睫毛に涙を溜めたまま、胸を締めつけるほど哀れな顔で訴えた。

「ただ、心配だったの……あなたの怪我が……」

「出て行けって言っただろ。わからないのか」

真琴がようやく顔を上げる。

充血した瞳に、いつもの甘い優しさはない。あるのは、背筋が冷えるほどの苛立ちと、沈んだ陰。

今の彼は、誰の声も聞きたくない。香水の匂いすら、吐き気がする。

脳裏を埋め尽くすのは、血の気の失せた絵里奈の顔。肩に突き立った刃の光景。

「今は誰も見たく...

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