第79章

廊下に響いていた重い足音が、完全に遠ざかった。

病室のドアはきちんと閉まっていない。隙間から冷たい風がすべり込み、薬膳粥の匂いを巻き上げる。そこに吐き気を催す血の生臭さが混ざり、鼻の奥へ無理やり流し込まれてくる。

瑠璃の頬にはまだ涙の跡が残っていた。けれど、その哀れな表情は一瞬で剥がれ落ち、下から勝ち誇った笑みが覗いた。

彼女はソファから立ち上がり、ドアのところまで歩いて、床の汚れた水たまりを見下ろす。

湯気の立つ薬膳粥。真琴が三十分も並んで買ってきた「気持ち」だったものが、いまは床にぶちまけられたゴミになっている。

「ちっちっ」

瑠璃は嫌そうに靴先で陶器の欠片を蹴り飛ばし、くす...

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