第80章

ヒールの音が廊下の奥へ溶けていき、病室はまた――死んだような静けさに沈んだ。

残っているのは、モニターの「ピッ、ピッ」という乾いた電子音と、絵里奈の荒い息づかいだけ。

左肩の傷が、火で炙られているみたいに疼く。裂ける痛みが神経を伝い、頭の奥まで突き刺さって、叫び出したくなるほどだった。

絵里奈はベッドに崩れ落ちたまま、冷や汗で濡れた髪が頬に貼りつくのも構わない。みっともない、と自分で思う余裕すらない。

ナースコールは押さなかった。目を開けたまま、ただ天井を見つめる。

さっきまでの瞬間的な怒りが引いていく。代わりに沈殿していくのは、骨の髄まで冷える憎しみ。

お姉ちゃんが、ウェディン...

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