第83章

そのときだった。

バンッ!

病室のドアが乱暴に押し開けられ、壁にぶつかった扉が鈍い衝撃音を立てた。

絵里奈の手がびくりと震え、握っていたコップが滑る。ころり、と絨毯の上を転がった。

毛皮を贅沢にまとい、宝石をこれでもかと身につけた中年の女が、勢いのまま踏み込んでくる。

――冬月知代。

絵里奈の母親だ。もっとも知代は、絵里奈を娘だと認めたことなど一度もない。

絵里奈が呼びかけるより早く、分厚い新聞と雑誌の束が投げつけられた。

「この恥知らず!」

ベッド脇に立った知代は、指先が絵里奈の鼻先に触れそうなほど突きつけ、顔を歪めて吐き捨てる。

「いつまで狩野家に居座るつもり? N市...

ログインして続きを読む