第88章

第12埠頭は、狩野家のボディーガードによって文字どおり底までひっくり返されていた。コンテナは一つ残らず開けられ、停泊している小舟も、消波堤の下の隙間に至るまで覗き込まれている。

「社長……」

警護隊長が駆け寄ってくる。額には冷や汗がびっしり、声は震えていた。

「いません。奥様の……影すら見つかりませんでした」

狩野真琴はデッキに立ったまま、その報告を聞いても怒鳴らなかった。

むしろ、異様なほど静かに――落ち着いていく。

嵐の前の、あの不気味な凪。

「見つからない?」

真琴は振り返り、地面にへたり込んだ賢治を見下ろした。傲慢な視線。

賢治は顔中血まみれで、首には紫紅色の指の痕...

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