第91章

狩野邸の主寝室。重たいベルベットのカーテンが、夜明けの薄光を容赦なく締め出していた。

部屋に満ちるのは、甘い気配――ではない。熱もない。あるのは剥き出しの所有欲と、受け身のまま呑み込まれる静かな死だけ。

絵里奈はベッドへ放り投げられた。塞がりかけた傷がずきりと疼き、血の気が引く。息を整える暇すらない。熱を帯びた、圧の塊みたいな身体が覆いかぶさった。

「俺を見ろ」

真琴の大きな手が絵里奈の手首を掴み、頭上へ押しつける。逃げ場はない。

その瞳はまだ赤い。嫉妬と激怒が混ざり合い、理性を焼き切った色。

「言え。お前は誰のものだ。……誰を愛してる!」

絵里奈の身体が小刻みに震えた。

情...

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