第94章

絵里奈はなりふり構わず車道へ飛び出し、よろめきながら彼の前まで駆け寄った。

「賢治……」

目の前に立った瞬間、涙が堰を切った。声は震えて、言葉にならない。

彼の腕に触れようと手を伸ばす。温かいか確かめたかった。どこを傷めているのか、この目で見たかった。

「無事で……よかった……ほんとに、よかった……」

支離滅裂な言葉が零れ、涙だけが止まらない。胸の奥に押し込めてきた罪悪感も、息苦しいほどの抑圧も、この一瞬で崩れ落ちた。

けれど――期待していた優しい返事は、来なかった。

賢治は眉をわずかに寄せ、反射的に一歩退いた。絵里奈の手を、避けるように。

いつも笑みと包容で満ちていたはずの...

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