第101章 甘い溺れ

伊原南に何かあってからというもの、伊原綾音はずっと一人で、必死にあらゆることを受け止めてきた。北野隆也に痛めつけられる日々も重なって、誰かに大事にされる感覚なんて、いつの間にか忘れていた。

けれど、この瞬間だけは違った。

抱きしめられ、胸に頬を預けたまま、綾音は何も言わずにいた。ただ、じんわりと沁みてくる温度を確かめるように。

静かなリビングには、寄り添う二つの影だけ。あたたかくて、穏やかで――胸の奥がほどけていく。

澄川琉生が自分をどう思っているのか、綾音は考えないことにした。手を差し伸べてくれるのなら、受け取ればいい。

いま一番大事なのは、子どもを見つけること。ほかのことは、後...

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