第103章 実の父親

採血だと聞いた途端、杏ちゃんは伊原綾音の胸の中でもがき、手足をばたつかせた。

「注射やだ、ママ。注射しない!」

椅子に座ったままの伊原綾音は、暴れる杏ちゃんを抱えきれない。様子を見ていた澄川琉生が手を伸ばす。

「俺が抱く」

伊原綾音が顔を上げ、子どもを渡す。澄川琉生の腕に収まった杏ちゃんは唇を尖らせ、甘えた声で訴えた。

「おじさん、注射しないもん」

「注射じゃない。ちょっと血を取って、ばい菌がいるか調べるだけだ。医者が薬を出すのに必要なんだよ」

低く落ち着いた声は、やわらかい。杏ちゃんは涙を溜めた大きな目をぱちぱちさせ、しゃくり上げながら言い返す。

「血を取るのも注射だもん」...

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