第11章 彼の条件に応じる

北野隆也は石田海の契約書を手にしてからというもの、伊原綾音を避けるように姿をくらませていた。だが、いま彼がここにいるのなら――この機会を逃す手はない。

伊原綾音はスマホをしまい、ホテルのフロントへ向かって北野隆也の部屋番号を尋ねた。しかし、受付は教えてくれない。どう探すべきか迷っていると、さきほど案内してくれたスタッフが戻ってきて、彼女の耳元へそっと顔を寄せた。

「伊原さん、北野さんのお部屋は……」

伊原綾音は振り返り、短くうなずく。

「ありがとう」

それからエレベーターへ向かい、709号室の前に立った。深く息を吸い、呼び鈴を押す。ほどなくしてドアが開き、数日ぶりに姿を見せた北野隆...

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