第110章 謝る

視線がぶつかった瞬間、あの言い争いの光景が、示し合わせたみたいに二人の脳裏へ跳ね上がった。伊原綾音は、もう以前とは違う。いちばん目につくのは――冷たさだ。

澄川琉生は、明らかに距離を置くようになった彼女を見て、胸の奥がざわついた。口を開こうとした、その前に綾音が先に言う。

「奏斗を見てて。お粥、飲みたがると思う。私は高村さんに、あっさりしたお粥を炊いてもらうから」

そう言い終えるや否や、彼が何か言う隙も与えず、琉生の横をすり抜けてキッチンへ向かった。

琉生は振り返り、遠ざかっていく背中を見送る。額の前髪をかき上げた手に、力が入らない。

綾音の変化は、痛いほどわかっていた。取引を始め...

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