第113章 バーでの出会い

こんな関係で拗ねるなんて、似合わない。伊原綾音は鼻で笑った。

「感情抜きの取引関係に、拗ねる資格なんてないでしょ」

バーの薄暗い照明が、伊原綾音の整った横顔をかすめる。そこに浮かぶのは、淡い哀しみと、刺のある自嘲。見つめる江見瑠璃は腹が立つより先に、胸が痛んだ。

澄川琉生みたいな立場の男が、本気になるはずがない。どうせ、親友の見た目に目をつけただけだ。

けれど綾音だって、北野隆也と離婚するために澄川琉生を頼った。責められる筋合いじゃない。

男なんて、結局みんな同じだ。

「昔は理解できなかったの。お金のためとか、何かのために自分を売る女の子たち。でも、北野隆也に追い詰められて逃げ道...

ログインして続きを読む